SESの仕組みを活用するEND企業が多い理由

SESは、IT業界ならではの仕組みです。
技術職という専門的な領域で納期が決まっていたことから建設業と同じような人の集め方が成立してきました。
しかし、今ではSESで納期が決まっていないような自社開発のプロジェクトでもSESの仕組みが活用されるようになり、IT業界特有のものとなったのです。
ただ、SESでエンジニアを集めると自社で雇用するよりも高い金額を支払うことになりますし、社内にノウハウが蓄積されない可能性も高いため、一見するとデメリットが多いように思えます。
それでもEND企業はSESの仕組みを活用するのはなぜでしょうか?
今回はその理由を様々な視点から解説していこうと思います。

IT企業の慢性的な人手不足

そもそも、IT企業が必要としているエンジニア数に対して、供給可能なエンジニアが足りていないと言われています。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY/ITjinzai_report_summary.pdf
その現状は数年で解消されるわけではなく、10年単位で続くと言われており、中小企業になればなるほどエンジニアの確保が難しい状況です。
また、エンジニアはスキルさえあれば比較的自分の自由な環境で仕事をすることができるため、ただ大企業に努めたいという思考だけでなく、スタートアップで自分のスキルを試したい人や報酬ではなく完全リモートのような環境に限定しているような方もいます。
そのため、エンジニアの要望を叶えることができれば、大企業には負けない採用力を担保することが可能なのです。
となると、大企業だからといってエンジニアを確保できるわけではありません。
エンジニアを確保できない企業は、必然的にSESに頼らざるを得ない状況になります。
では、なぜエンジニアの受給は需要過多となっているのでしょうか。
それにはいくつかの理由があります。

エンジニア教育体制の不足

エンジニアは高度な技術が要求されるものから、1日学べばできてしまうものまで多種多様なジャンルがあります。
HTMLだけであれば、数時間学べば簡単なことはできてしまいます。
しかし、それだけではエンジニアとして成立するはずがなく、実際はそこにCSSやJavaScriptのスキルが備わったり、PHPやJavaといったサーバーとのやり取りを伴う言語が必要となります。
となると、1日でこのスキルを身につけることは現実的に難しく、認められるスキルを獲得するまでには最低でも2年はかかると言われます。
そのため、近年では社会人を中心にエンジニアのスキルを身につけるためのスクールビジネスが乱立しており、エンジニアスキルの向上やエンジニアでの転職を目指して通っている人も少なくはありません。
この理由は、国のエンジニア教育に対しての遅れも一つの原因だと言われています。
近年では初等教育からエンジニアの授業を盛り込むような話も出てきているため、今後はその需要は解消される可能性も出てきているものの、今の小学生が社会人になるまではその需要は見込むことができないのです。

身につけるスキルの高度化

教育体制の話を前述しましたが、実はエンジニアリングは年々高度化してきているため、今の教育が未来に役立つかと言われると、100%保証できるものではないのです。
そのため、エンジニアは生涯勉強を積み重ねていかなくてはならず、趣味≒エンジニアリングの人も少なくはありません。
初等教育からエンジニアの勉強を行うことは、将来エンジニアになる人が増える可能性はあるものの、実際にはそのスキルが社会人になったときに役立つかと言われるとなんとも言えない状況はありえます。
ただし、どのようなエンジニアでも基礎は変わりません。
基礎をしっかりと身につければ、ツールの使い方を日々学ぶことができればよいのです。

専門的スキルの習得の難しさ

現状、エンジニアの教育体制が整っていないため、独学でのエンジニアリングを行う人も少なくはありません。
しかし、独学でエンジニアになるのはものすごい労力と執念を必要とします。
感覚値、独学で社会人として通用するエンジニアになれるのは100人いたら1人いるかいないかです。
ほとんどの人が、初めてプログラミングに触れるのは専門学校や大学であり、高専でも触れる人もいるもののそのような人はごく僅かとなります。
そのため、社会人になって非エンジニアの職種になった人がエンジニアリングを学ぶことは基礎もなにもないため、とてつもなく難しいのです。

極めれば極めるほど安定しやすい環境

結果的にエンジニアとして通用するスキルや経験を習得したら、エンジニアには様々な道があります。
一つはその会社で経験を積んでいくことです。
会社での役職を獲得して管理職に上り詰めていくことや、SESを通してスキルをさらに上げていき、正社員技術者として経験値を上げ、多くのお客様の要望に応えられるスペシャリストになることです。安定してお給与がもらえ、雇用状態も安定して働くことができます。

もう一つは、独立してフリーランスになることです。
一人前のスキルを身につければ40歳くらいまでの期間はフリーランスとして活躍することができる方もおりますが、その後の将来を考えるとフリーランスをやっていることに不安を感じることもあります。40歳以上になってからの転職は多くの企業が二の足を踏むのは当たり前のことです。フリーランスになる方は、自分のスキルと、将来をしっかりと見据えて考えたほうが賢明です。

スキルアップに貪欲な技術者が多い

前述通り、エンジニアは生涯勉強をし続けていく必要があります。
反面、スキルアップさえできれば安定して仕事をすることができるので、エンジニアはスキルアップに貪欲な方が多いです。
スキルアップに貪欲な人ほど、SESの仕組みを活用して様々な会社に常駐する傾向にあります。
SESであれば転職歴にならずに多くの企業でスキルを磨くことができるので、最も効率的で現実に則した契約形態なのです。

プロジェクトの状況に応じて固定費の調整が可能

クライアントの視点で考えたときにSESの仕組みはエンジニアリソースの確保以外にもメリットがあります。
それは、短期的契約にてコントロールして、状況次第でリソースを柔軟に増減させることが可能な点です。
今は10人のエンジニアが必要だが、プロジェクトが落ち着いたら3人まで縮小させる。
このようなことを行うには全てが正社員のエンジニアで構成されたチームでは難しいです。
しかし、SES契約であれば、月単位での契約も可能なためプロジェクトの目処がついたら契約満了にてリソース縮小を行えるのです。

フリーランスの怖さ

最後に、近年ではフリーランス中心のエージェント業が大々的な広告を打ち出しており、SEOでもフリーランスと調べるとエンジニアのコンテンツが大半をしめます。
フリーランスになるともらえる報酬額が多くなるように見えるときがありますが、企業の広告には最大値で書かれることが多く、最大値を貰えるエンジニアのスキルを自分が備えていないのにも関わらず、広告のメッセージを鵜呑みにしてフリーランスになってしまうような人もいます。
これによって、フリーランスになってから失敗をするという方が多くなっているのは憂慮すべき点です。正社員でいることのメリットをしっかりと考え、焦らずに、フリーランスになるのはじっくり思慮してからのほうが良いと言えるでしょう。

まとめ

エンジニアは今最も売り手市場の業界と言っても過言ではありません。
しかし、それはスキルのあるエンジニアに限って言えることで、並のエンジニアであれば売り手市場とは言えません。背伸びをせず等身大の自らを見つめ、安定的に仕事をすることも視野に入れるべきです。