SESとは何かについてを徹底解説

SES契約の中身、しっかりと整理できていますか?

SESは、IT業界における契約形態の1種というのはご存知の方も多いかと思いますが、
「派遣や請負との違い」や「メリット・デメリット」について、
適切に理解している人は、案外少ないようです。

そこで今回は、大手人材サービス会社でのSES営業経験が4年ある著者が、
SES契約の特徴について、詳しく解説していきたいと思います。

SESとは

SESとは、System Engineering Service:システムエンジニアリングサービスの略称で、
IT業界においてクライアントのシステム開発や運用を行う為に、
エンジニアの技術や労働力を提供するサービスのことを指します。

この事業においては、少なくとも下記の3者が必要となります。

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・クライアント(発注元)
・SES事業の運営会社(受注先)
・エンジニア(技術者)
※エンジニアには、「個人事業主(フリーランス)」と
 「企業に雇用されている社員」の2パターンがあります。
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契約の流れは、大まかに下図のようになります。

契約形態

SES契約の概要が分かったところで、契約形態の説明をいたします。
特に「請負契約」との違いと「派遣契約」との違いは重要なポイントとなりますので、
このタイミングでしっかりと覚えてしまいましょう。

SES

準委任契約に当たります。
「エンジニアとしての技術力及び労働力の提供」が目的となり、
作業の完成義務は無く、働いた時間に応じて対価を受け取ることが出来ます。
基本的には、客先常駐となるケースが多いですが、
最近はリモート作業を容認している企業も増えてきているようです。

請負

SESとは異なり、仕事の完成義務がある契約です。
作業時間に関わらず、仕事の完成に応じて対価を受け取るシステムとなるため、
依頼物が完成しない限り、報酬を得ることが出来ません。

「SES契約」と「請負契約」の違い

・「作業時間」に対しての対価であるか、「仕事の完成」に対しての対価であるか

・瑕疵担保責任の有無(製品の不備に対する責任)

請負契約では瑕疵担保責任がありますが、SES契約では存在しません。
しかし、SES契約でも一定の品質の担保が保証できるよう、
契約書上で善管注意義務(善良な管理者の注意義務)が定められているケースが多いようです。

派遣

SES契約同様、仕事の完成義務は無く、働いた時間に応じて報酬を受け取ることが出来ます。
「雇用契約を結んでいる自社の社員」もしくは、
「メディアなどから登録があり、契約社員化された方(一般的な派遣会社のシステムはこちらです)」
を客先に派遣し、労働力を提供する契約となります。

「SES契約」と「派遣契約」の違い

・業務の指揮命令権が誰にあるのか

SES契約では、指揮命令権が受注側(SES事業者)にあり、
派遣契約では、指揮命令権が派遣先(クライアント)にあります。

こちらを区別しておかないと、SESの適切運営可否の観点から、
クライアントもしくはSES事業者がリスクを被ることになってしまうため、
立場は、より明確にしておく事が重要となるでしょう。

SES契約のメリット

クライアント

①スキルの高いエンジニアを迅速に募集する事ができる。

常に人手不足と言われているIT業界では、
必要なタイミングで必要なスキルを持ったエンジニアを、
正社員として採用する事は、至難の業です。

またクライアント企業が未経験の人材や新卒を採用して、
エンジニアとして育成する事も出来なくは無いですが、
技術の進歩も相まって、即戦力まで育てるためには、
膨大な時間と労力がかかります。

そこでSESを使用すれば、
「必要な時に」「必要な技術」を持ったエンジニアを募集する事ができます。

またSES事業者に依頼をすれば、
契約書のやり取りと並行して人材の募集をかける事ができ、
技術者との面談も基本1回となっているため、
早ければ、募集から1〜2週間で参画が決定する事も大いにあり得ます。


②採用のリスクヘッジになる。

企業と人との相性は、面接の場だけで全てを測れるものではありません。
期待をして採用した正社員が、全くの期待外れだったという例も往々にしてあります。

そこでSES契約ですが、基本的に初回契約は1ヶ月で締結する事が多いため、
いわゆる『お試し期間』を設ける事が可能となるのです。

これは企業のみならず、採用される側にも大いにメリットがあると言えます。

企業の理念やビジネスにどれ程共感していたとしても、
上司や同僚との人間関係ひとつで、人は深く悩んでしまうものです。

当たり前ですが面接では、社内の全ての人と話す事は不可能なため、
「馬が合わない同僚」というリスクを回避する事は難しい。

そこでSES契約で『お試し期間』を設ける事で、
自分がその企業組織に本当にマッチしているかどうかを確認することができるでしょう。

エンジニア

①多様な会社での業務経験を積むことができ、自分の意向に沿ったスキルアップが叶う。

今やどの企業でもIT化が進んできており、
また「フリーランス」という働き方も認知が進んできている背景から、
SESの案件数は、日に日に増加の一途を辿っております。

言わずもがなですが、SES契約ではクライアント側に就職するわけではありません。
そのため、案件を選ぶ自由度が「雇用される」よりも高く、
自分が高めていきたいスキルや、描くキャリア像に合わせて、
案件を選択していくことが出来ます。

また、開発案件では長期的(約2〜3年)に同じ作業に従事することはほとんどなく、
依頼された作業の評価がクライアント内で高ければ、
新しいプロジェクトを任される可能性も十分にあり得ます。

②ビジネスマンとしてのコミュニティが広がる。

IT業界は広いようで狭い業界だと言われる事が多く、
以前一緒の現場で作業したことのあるエンジニア同士が、
数年の時を経て、別の現場で再会するといったケースもザラにあり得ます。

そのため、SES業界に従事する上では、技術力だけでなく、
人とのコミュニケーションも非常に重要な要素となります。

また案件によっては、エンジニア以外の業種の人とも連携を取る必要があるため、
業界で有名な事業責任者、CTO、CEOの人などとも、
知り合うことの出来るチャンスがあります。

③時間のコントロールがしやすい。

請負との違いでも説明したように、
成果物の完成ではなく作業を遂行する事に責任を持つ契約であるため、
リリースに間に合わないため徹夜作業という依頼は、
請負契約よりは発生しづらくなっております。

また企業毎の規定にもよりますが、
自身が任された作業に責任を持って、作業遅延を発生させなければ、
私用による早退や遅刻の融通が効きやすい企業も増加してきております。

社会人としての責任を果たしている方は、プライベートも大事する事が出来るため、
ワークライフバランスを重要視する現代社会の働き方に適した契約形態であるとも言えるでしょう。

④自社の社員と仲良くなりやすい

同じ場所で仕事をしていると、職場内の方に飲みに誘われても「仕事以外の時間も一緒にこの人といたくないなー」とか、仕事上でぶつかることも多く、ビジネスライクな付き合いになることが多々あります。

SESの場合は、帰社日という月に1度全社員が集まるような日を設けていることが多く、また、SESの優良企業では同好会などをつくって社員同士の関係性を高めようとしてくれたり、同期組をつくってくれて、関係性構築に励んでいる企業があります。

そうした企業では、皆が外部で頑張っており、帰社日や同好会などの集まりの際には、「みんなお客様先で頑張ったね~!お疲れ様~!」ということで、険悪なムードとはほど遠く、お互いに頑張っていることを分かち合い、飲みに行く方も多く、社内で互いに仕事をしてビジネスライクになるよりも、助け合いの関係性が構築され、生涯にわたっての仲間になることも多いです。

SESを行う上で気をつけること

SES事業者

①「SES契約の特徴」について、クライアントやエンジニアが理解できるよう、事前に丁寧に説明しましょう。

SES事業者は、「SESのプロ」として、「SESとは何ぞや」を周知させていく義務があります。

クライアント:

特にEND企業に対しては、契約締結前にSES契約に関する相互の認識を合わせておく必要があります。
※SIerや受託開発会社に対しては、SES契約に精通している企業や担当者が多いため、一から丁寧に説明する必要はないでしょう。

END企業にはSIerや受託開発会社よりも、
SES契約に慣れていない担当者が比較的多く存在します。
中には、SES契約の導入を初めて検討している企業もおられるでしょう。

特に今まで派遣契約のみで外部リソースを集めていた企業に関しては、注意が必要です。
上記で説明している「SES契約と派遣契約の違い」を丁寧に説明し、
後々のトラブルを未然に防ぐことが出来るよう努めましょう。

エンジニア:

客先へ常駐するエンジニアに対しても、
SES契約の流れを事前に十分に理解してもらっておく必要があります。

常駐するエンジニアがSES契約の特徴を理解することが出来ておらず、
「休む際の連絡先」や「対応可能な作業範囲」を認識していないと、
予期せぬトラブルに見舞われてしまう事もしばしば。

3社間で幸せな出会いとなりますよう、事前の擦り合わせを入念に行いましょう。

②エンジニアの帰属意識にご注意を。

SESで客先常駐しているエンジニアは、
自社開発をしているエンジニアとは異なり、
どうしても自社への帰属意識が薄れてしまうことがあります。

「常駐先の人達と一緒にいる時間の方が長い」といったどうにも出来ない理由もありますが、
「所属企業の営業が気にかけてくれない…」といった悲しい理由も時にはあるよう。

そこで対策の一環として、実際に企業が実施している一例が下記です。

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・定期的に現場付近でランチをし、状況のヒアリングを行う。
:常駐しているエンジニアが、気になっていたお店をチョイスするのも良いですね!
・月1度の帰社日を設ける。
:企業の内状を話した後、飲み会を開催する企業が多いようですね。
・自社でプログラミングの勉強会を開催する。
:自社内でチームを作って、ツールやゲームの開発を行う企業もあるみたいです。
・自社で部活動やサークルを作る。
:ゲーム部、サイクリング部、野球部、飲み部 etc
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自社のエンジニアの「帰属意識」を育むことが出来るよう、
上記の例を参考に、営業からエンジニアへの働きかけを行なっていきましょう。

エンジニア

①最後までプロジェクトに関われない可能性がマレにある。

SES契約は、クライアントの予算で左右されてしまう事があるため、
サービスの設計段階から立ち会っている人でも、
リリース時まで立ち会う事ができないといった事がまれに起こり得ます。

そのような場合には、リリース時まで必要な人材と思われるよう、
クライアントの信用を勝ち取るベく、日々の業務に励むことや、
「自分がスキルアップするまでは我慢」と時には割り切る事が必要です。

②「誰に」相談したら良いのかわかりづらい。

SES契約は必ず3者以上の関係者が発生するため、「休みの取得」や「現場の状況」などを、
誰に相談したら良いか分からないという事もあるのではないでしょうか。

そのような時は、「自分の契約先は誰か?」を考えて、
その「契約先」に相談しておけば、トラブルに巻き込まれる可能性は少ないでしょう。

『個人事業主』→『SES事業者』へ。
『企業の正社員』→『所属企業』へ。
という流れですね。

「クライアントに直接相談してはいけないの?」と思われるかもしれませんが、
先程お伝えした『指揮命令権の所在』が派遣契約と異なるため、
相談を受けるクライアント側にとって、適切なSES契約を運営するリスクが発生してしまいます。

最初はややこしく感じてしまう人もいるかもしれませんが、
自分自身とクライアントの身を守るものと思って、遵守するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回説明したSESの特徴やメリット、注意事項などを正しく理解した上で、
適正な運用を行うことが出来れば、企業・エンジニアの双方にとって、
とてもメリットのある契約だというのが理解できたのではないでしょうか。

実際に、大手企業、中小企業、零細企業の多くがこのSESを利用して、様々なサービスを開発、運用しているというのが実状です。SESが日本の技術を支えていると言っても過言ではないほど、多数の企業が利用しているサービスですので、SES契約でこれからお客様先に常駐される方、既に常駐されている方は、「僕たち、私たちが日本企業を支えているんだ」という誇りを持って、SESを遂行してほしいなと思っております!

今回の記事が、既にSES業界で関わっている人や、
今まさにエンジニアを目指している人にとって、
有益な情報となることを心より祈っております!